ネット物販歴20年超えの専門家 加藤さとしです。
中国・欧米から電気用品を輸入して
国内で販売する際に注意すべきが、
”PSEマーク”の表示です。
PSEマークとは簡単にいうと、
「日本国内で使用しても問題ない」と判断された
電気用品にのみ表示できるマークです。
海外渡航経験がある方はわかると思いますが、
日本と海外の電圧は異なる場合があります。
電圧が異なれば当然、
電気用品の仕様も違ってくるわけです。
もし日本と異なる電圧に対応した製品を
日本国内で使ったら・・・
製品が壊れるだけでなく、最悪、
火災等で死傷者が出てしまうリスクもあります。
これを防ぐために、日本で使っても問題ない
製品を販売する際はPSEマークの表示が
義務付けられているのです。
ですので、電気用品を中国や欧米から輸入する際は
個人・法人に関わらずPSEマークの知識が
必要不可欠となります。
とは言っても、ほとんどの人はPSEマークの
認証手続き等をしたことがないと思うので、
- どんな製品がPSEマークの対象品なのか?
- PSEマークの認証手続きはどのようにするのか?
- 費用や時間はどれくらいかかるのか?
- PSEマーク付商品は個人で販売すべきか?避けるべきか?
といった疑問が尽きない
のではないでしょうか?
そこでこの記事では、
- 最低限知っておくべきPSEマークの知識
- PSEマーク認証手続きの流れ、かかる時間と費用
この2つを中心に解説していくので
ぜひ参考にしてみてください。
PSEマークとは?どんな製品が対象なのか?
日本では2001年4月、電気用品による
危険および障害発生の防止を目的とした
「電気用品安全法」という法律が施行されました。
電気用品安全法では、国が指定した
約450品目の電気用品を対象に
製造・販売の規制がされています。
この約450品目を販売する際は、事前に
第三者機関による検査を受ける必要があり、
適合していると判断された商品に
表示できるのが「PSEマーク」です。
つまり、PSEマークが付いた製品
=日本国内での使用に問題がない製品
と言い換えることができます。
※使用上の問題がないのであって、
安全性が担保されているわけではない点は
注意する必要があります
なおPSEマークを付けるべき商品は
電気用品安全法施行時は450品目ほどでしたが・・・
その後、対象品目が徐々に追加され、
2019年現在は457品目となっています。
PSEマークは、
- 特定電気用品
- 特定電気用品以外の電気用品
という2つの種類があり、457品目は上記
どちらかに振り分けられています。
①特定電気用品
「特定電気用品」はひし形の中に
PSEと記載されたマークが特徴です。
このマークの対象となるのは、
高い安全性が必要とされる116品目です。
経済産業省が発行している
電気用品安全法 法令業務実施ガイドでは、
- 長時間無監視で使用されるもの
- 社会的弱者が使用するもの
- 直接人体に触れて使用するもの
といった製品が指定されています。
たとえば次のような製品です。
特定電気用品の対象品例
- 電気温水器
- 電熱式・電動式おもちゃ
- 電気ポンプ
- 電気マッサージ器
- 自動販売機
- 直流電源装置
ほかにも身近なもので言うと、
ACアダプタや電源コード、
充電器なども該当します。
特定電気用品を輸入販売する際は、
国が指定した検査機関で高難易度の
検査を受ける必要があります。
検査では多くの時間、費用がかかるので、
個人が片手間でやるには適しません。
②特定電気用品以外の電気用品
「特定電気用品以外の電気用品」は、丸型の中に
PSEと記載されたマークが特徴です。
対象品は、特定電気用品以外の341品目です。
特定電気用品以外の電気用品の対象品例
- 家電製品全般(テレビ、冷蔵庫、洗濯機など)
- 照明器具
- リチウムイオン蓄電池搭載品(モバイルバッテリー)
一般的に個人が中国や欧米から輸入する電気用品は
こちらの基準に該当することが多いです。
特定電気用品同様に認証時の検査が必要ですが、
国指定の機関で検査を受ける必要はなく、
例えば仕入元の工場が提携している
検査機関などに依頼することができます。
そのため、検査時間は短く
費用の負担も少なくなります。
PSEマークが必要かどうか判断がつかない場合
PSEマークが必要な商品は
経済産業省のHPに記載されていますが、
必要かどうかの判断が付きづらい場合もあります。
基本的にコンセントに接続して使う電気用品は
ほぼ例外なくPSEマークが必要です。
反対に、電気用品でも
- 乾電池や充電池で駆動するもの
- USBで充電するもの
- 電源に直接繋がないもの(スマートフォン本体、ACアダプタと分かれているデスクライト本体など)
といった製品は対象外となり、
PSEマークの表示は不要です。
とは言っても、扱う商品によっては
判断が付きづらいものも少なくありません。
そのような場合はなんとなくで決めるのではなく、
必ず経済産業局に問い合わせをしましょう。
経済産業局は事業者の住所ごとに
9カ所の窓口を用意しており、
電話で簡単に問い合わせることができます。
事故が起こってからでは遅いので、
判断に迷ったら必ず確認をしましょう。
海外輸入品に初めからPSEマークが付いていても注意!
中国のアリババ等で売られている製品の中には、
稀に初めからPSEマークが付いているものもあります。
またサプライヤーの中には
「PSE取得済みの製品だからすぐに販売できます」
と言っている業者もいます。
このような場合、PSEマークが付いているから
日本でそのまま販売しても大丈夫だろう・・・
と思うかもしれませんが、それはNGです。
まず、PSEマークというのは製造元が
最初から表示するものではなく、
輸入事業者自身で必ず表示する必要があります。
PSEマークを表示する際は
単純にマークのみでなく、
- 届出事業者名
- 登録検査機関名称(特定電気用品の場合)
- 定格電圧、定格電流
といったことも併せて記載するため、
他の人が作ったラベルをそのまま
使い回すことはできないのです。
PSEマークが付いてるからすぐに販売できますよ
と言っている業者は、適当にPSEマークのラベルを
印刷して貼り付けているだけで、実際は
検査等をしていない可能性も十分にあります。
また、商品によっては「UL」や「CE」といった
マークが記載されているものもあります。
- ULマーク…米国の認証企業が実施する試験、検査をクリアした製品に付与されるマーク
- CEマーク…EU加盟国へ輸出する際に安全基準を満たした製品に付与されるマーク
いずれも認証マークの一つですが、
日本へ輸入する際は意味を成しません。
ですので、基本はPSEマークの
認証手続きを最初から行う必要があります。
ただし稀に、登録機関が発行したPSE適合証明書や
テストレポート(試験報告書)といった
書類を工場から貰える場合があります。
この場合は日本向けに作られている製品で、
以前にPSEマーク認証手続きが済んでいる
可能性があります。
このような製品は証明書の
有効期限が切れていない限り、
検査等なしでPSEマークのラベルを作成、
貼り付けるだけで輸入販売が可能です。
PSEマーク認証なしに販売すると、どうなるのか?
本来PSEマークが必要な商品を
非表示で販売していた場合・・・
最悪、100万円以下の罰金や1年以下の懲役、
法人においては1億円以下の罰金が科される
可能性があります。
2014年には大手ホームセンター「コーナン」が、
海外から輸入した約1,600の電化製品を検査済みと判断し、
そのまま販売していましたが、
実際は検査がされていなかったため
3ヶ月の販売停止処分が下されています。
出典:The Sankei Shimbun & SANKEI DIGITAL
この時は被害者等は出ていなかったようですが、
万が一購入者が怪我をしたり死亡した場合は
巨額の損害賠償を請求される可能性もあります。
これまで個人がPSEマーク認証なしで販売して
逮捕されたという話はあまり聞きませんが、
ここ最近は取り締まりを強化しているので
十分に注意しなければいけません。
中国輸入・欧米輸入物販でPSEマーク付の商品を販売するメリットやデメリット
メリット:参入障壁があるので大きな利益を上げられる可能性がある
PSEマーク認証が必要な商品を販売する
最大のメリットは、大きな利益を上げられる
可能性があることです。
やはり販売までに時間と費用を要するため、
リサーチ途中で利益が出ると分かっていながらも
スルーされている商品は多く存在します。
そういった商品を中国や欧米から輸入して
販売できるようになれば、ライバルがいない
ブルーオーシャン市場で利益を
上げ続けることができます。
デメリット:PSEマーク不要の商品を販売するよりも費用・時間がかかる
しかしながら、製品の種類によっては
PSEマークの認証は時間・費用が
かかり過ぎる場合があります。
先ほどもお伝えしたように、
PSEマークには
- 特定電気用品→時間・お金ともにかかり面倒
- 特定電気用品以外の電気用品→個人レベルでも対応可能
上記2種類がありますが、
特定電気用品は検査が非常に面倒なので
個人での販売はおすすめしません。
PSEマーク認証手続きのやり方や流れは
次章で詳しく紹介します。
中国輸入・欧米物販でPSEマーク付の商品を販売する方法・流れ
出典:経済産業省
PSEマークの認証手続きは
以下の流れで進めていきます。
①事業届出を提出
②基準適合の確認
③(特定電気用品である場合)適合性検査を受ける
④自主検査を実施
⑤PSEマークの貼り付け
①事業届出を提出
日本国内に居住する個人や法人が
PSEマーク表示対象の電気用品を輸入する場合、
「事業開始日から30日以内」に
事業の届け出をする必要があります。
必要書類は経済産業省の
公式HPからダウンロードできます。
提出は管轄の経済産業局の窓口に直接提出、
または郵送となっています。
届け出自体は無料です。
②基準適合の確認
該当製品が電気用品安全法の
基準に沿って作られているかを
確認する作業です。
まずは該当製品が基準を満たすように
工場へ製造依頼をかけます。
次に、出来上がった製品が適合しているか、
外部の認証機関に確認の依頼をします。
適合していた場合には
”適合証明書”が発行されます。
③(特定電気用品である場合)適合性検査を受ける
該当商品が特定電気用品である場合、
さらに国に登録された検査機関で
適合性検査を受けて証明書を
発行してもらう必要があります。
登録検査機関は国内と海外に
それぞれ7機関あります。
国内の登録検査機関
- 一般財団法人電気安全環境研究所
- 一般財団法人日本品質保証機構
- 一般社団法人電線総合技術センター
- テュフ・ラインランド・ジャパン株式会社
- 株式会社UL Japan
- インターテックジャパン株式会社
- 株式会社コスモス・コーポレイション
外国登録検査機関
- テュフ ラインランド エルゲーアー プロダクツ ゲーエムべーハー
- テュフ ラインランド 台湾 リミテッド
- テュフ ラインランド 香港 リミテッド
- 中国品質認証センター
- 財團法人台灣電子檢驗中心
- UL LLC
- TÜV SÜD PSB Pte Ltd
検査費用は1回あたり50〜100万円、
検査期間は最低1〜2ヶ月程度は
見ておいたほうがいいでしょう。
④自主検査を実施
商品が完成したら、国が定めた方式で検査を行い、
”検査記録”を作成しておく必要があります。
検査記録は、検査日から3年間の保存が必要です。
「自主検査」と聞くと簡易的なものに思えますが、
実際は専門的な知識や設備がなければできません。
特定電気用品の検査内容
- 製造工程検査
- 完成品検査
- 試料検査
特定電気用品以外の電気用品の検査内容
- 電線管類及びその附属品、ケーブル配線用スイッチボックス、ヒューズ、白熱電
- 球、蛍光ランプ、装飾用電灯器具→外観検査
- ベルトコンベア及び理髪いす→外観及び絶縁耐力検査
- リチウムイオン蓄電池→外観及び出力電圧
- その他→外観、絶縁耐力、通電検査
いずれにしても個人が
簡単に出来るものではないので、
基本は外部の検査機関に依頼をします。
⑤PSEマークの貼り付け
すべての検査が終了したら、
- PSEマークの記号
- 届出事業者名
- 登録検査機関名称(特定電気用品の場合)
- 定格電圧、定格電流
が記載されたPSEマークのラベルを
製品に貼り付けたり印字をしたりします。
ここまで来ればようやく
製品を販売することができます。
結局、PSEマーク認証の製品は販売すべきなのか?
結局のところ、PSEマーク表示が
必要な商品は扱うべきなのでしょうか?
その答えは・・・・
「特定電気用品以外の電気用品」で
なおかつ
「構造がシンプルなもの」に関しては
検査費用が安く済む場合があるので、
やってみる価値はあると言えます。
反対に、
- 「特定電気用品」→50〜100万円の費用と数ヶ月の期間が必要
- 「複雑な特定電気用品以外の電気用品」→30〜50万円程度の費用が必要
上記の場合は大きな手間とコストがかかり
万が一失敗した場合のリスクも相当にあるので、
初心者にはおすすめできません。
まとめ
今回は中国や欧米から電気用品を輸入、
販売する際に欠かせない
PSEマークの知識について解説しました。
PSEマークの認証手続きは
思った以上に面倒と感じた人が
多いのではないでしょうか?
PSEマーク付商品の販売は
上手くいけばライバルのいない市場で
利益を上げることができますが、
それなりのリスクも取る必要があります。
時間とお金をかけてまで扱うべき商品なのか?
という点をよく見極めた上で
販売するかどうかを決めてみてください。