中国輸入Amazon販売の専門家 加藤さとしです。
今回紹介する「知的財産権」は、
オリジナル商品の開発・販売をするなら
必ず頭に入れておいてほしい知識です。
中国ではハイブランドの偽物が
横行していることは、
あなたもご存じのはず。
偽物品を輸入・販売する人は
まずいないと思いますが、
知的財産権を知っておかないと、
自分でも気づかないうちに
同じようなミスをしてしまう恐れがあります。
そして、その罪を犯した場合の代償は、
人生がガラッと変わってしまうほど
大きいものです。
法律は難しい部分も多いですが、
今回の記事では具体例等も交えて
なるべく簡潔に説明しているので、
この機会にぜひ頭に入れておいてください。
中国輸入OEM販売で必須の知識「知的財産権」について
知的財産権とは?
知的財産権とは、知的創作活動によって
生み出されたもの(知的財産)を保護する権利です。
簡単に説明すると、
他の人が発明したものや画期的なデザイン等は
その人に使用権があるので、勝手に使ってはいけないよ
というものです。
発明品等は、開発までに
膨大な時間と費用がかかっています。
もし、それを他人がすぐにマネできたら・・・
「新しいものを作ろう!」なんて、
誰も思えなくなってしまいますよね。
どうせすぐに真似されて、
それまでの労力が水の泡に
なってしまうんですから。
すると、産業自体の発展がなくなり、
国力が衰えていってしまいます。
これを防ぐために生まれたのが
「知的財産権」です。
中国輸入OEM販売をするなら「知的財産権」を知っておくべき理由
知的財産権は、非常に強力な権利です。
もし権利侵害をしてしまった場合、
懲役刑や罰金刑が科されるほか、
権利元から莫大な損害賠償を
請求されることもあります。
出典:AFPBB News
たとえば、CASIOの人気腕時計「G-SHOCK」の
模倣品を製造していた中国企業4社は、
知的財産権の侵害で1億5,000万円の損害賠償を
支払うよう命じられました。
出典:日本経済新聞
こちらは、虫さされ薬「ムヒ」の模倣品を
製造していた中国企業2社に
約5,000万円の損害賠償を支払うよう命じた例です。
出典:株式会社MTG
腹筋を鍛えるシックスパッドの
模倣品を販売していた中国企業には、
約3,520万円の損害賠償請求がされています。
こういった事例は氷山の一角に過ぎず、
中国では知的財産権を侵害するような製品が
いまでも製造・販売されています。
もし、あなたがオリジナル商品を作る際に
知的財産権をよく理解しておらず、
こうした製品を仕入れて加工・販売していたら、
取り返しのつかないことになってしまいます。
自分の身を守るためにも、
これから紹介する知的財産権の種類については
しっかり頭に入れてください。
中国輸入OEM販売と関連がある知的財産権の種類を解説
知的財産権の種類
知的財産権は、
大きく以下の11種類に分けられています。
1、特許権:発明を保護
2、実用新案権:物品の形状を保護
3、意匠権:物品、建築物、画像のデザインを保護
4、商標権:商品・サービスのマークを保護
5、著作権:美術・音楽等の精神的作品を保護
6、回路配置利用権:半導体集積回路の回路配置の利用を保護
7、育成者権:植物の新品種を保護
8、営業秘密(不正競争防止法):ノウハウや顧客リストの盗用などを規制
9、商号:商号を保護
10、商品等表示(不正競争防止法):著名な商標等の不正使用を規制
11、地理的表示:産地と結びついている産品の名称を保護
上記の中でも、中国輸入OEM販売をするなら
絶対知っておくべきなのが次の5つです。
①特許権
②実用新案権
③意匠権
④商標権
⑤著作権
①特許権
特許権は、高度な発明品を
保護するための権利です。
最近の例で言いますと、京都大学の教授である
山中伸弥さんが開発したiPS細胞技術は、
日本やアメリカで特許登録されています。
そのため、他の人が勝手に
iPS細胞技術を使うことはできません。
ただし、特許権については保護期間が原則20年
(医薬品については最長25年まで延長可能)で、
保護期間が切れた特許は誰でも利用可能になります。
エジソンが発明した”白熱電球”も特許取得されていますが、
既に保護期間が終了しているため、現在は誰でも
白熱電球を製造して売ることができます。
ここまで解説したものは
誰が見ても”発明品”と呼べるものなので、
個人が中国輸入ビジネスをするなら
あんまり関係ないんじゃない?
と思う人もいるかもしれません。
しかし、大手メーカーが発売している商品は
特許取得されている可能性があり、
その商品を模倣した中国輸入品を仕入れてしまう
危険性もあるので注意しなければいけません。
出典:株式会社MTG
たとえば、こちらは株式会社ファイブスターが、
株式会社MTGの美顔ローラーを模倣した商品を
販売していたとして特許侵害で訴訟された例です。
出典:株式会社MTG
こちらがMTG(訴訟した側)の美容ローラーです。
最近ではよく見るタイプの商品ですよね。
実際、アリババでも検索してみると・・・
とても似ている商品が
複数販売されていました。
商品が似ているからといって
特許侵害になるわけではないですが、
もし丸々パクった商品だと訴訟に
発展してしまう可能性が高いです。
こういったリスクを避けるには、
リサーチの時点で
- 大手メーカーが似た商品を販売してないか?
- 仕入れ商品が特許侵害してないか?
を確認することが重要です。
②実用新案権
実用新案権も特許権同様、
発明品を保護する権利です。
しかし、特許権とは違う点がいくつかあります。
まず実用新案権に該当する商品は
”高度な発明品”である必要はありません。
実用新案権では、物品の形状、構造または
組み合わせに係る考案を保護するための権利
とされています。
つまり、0から開発したものではなく、
既存の製品を少し改良して
使いやすくした”小発明品”でもいいのです。
出典:シャチハタ株式会社
たとえば、ハンコとインクが一緒になった
シャチハタ株式会社の「Xスタンパー」。
この商品はシャチハタ印を改良したもので、
たしかに画期的な製品ではあるものの、
発明品とは呼べないので
”実用新案権”の対象となります。
他にも、
- 消しゴム付き鉛筆=消しゴム+鉛筆
- チャイルドシート=子供用の座席+シートベルト
- クイックルワイパー(既存のフローリングワイパーの可動域を広げることで使いやすく改良した)
といったものが該当します。
また、特許権と実用新案権の違いとして
保護期間の長さがあります。
特許権は20年であるのに対して、
実用新案権はその半分の10年です。
いずれにせよ、特許権同様、商品仕入れ時は
実用新案権を侵害していないかも
確認する必要があります。
③意匠権
意匠権は、物品、建築物、画像の「デザイン」を
保護する権利です。
ここでいう「デザイン」とは、
形状・模様・色彩やこれらの結合を指します。
中国輸入ビジネスでは、
特徴的な形の商品を仕入れる場合に
意匠権を侵害していないか
特に注意しなければいけません。
意匠権の例
①ユニチャームの「超立体マスク」
出典:ユニチャーム
②アッシュコンセプトの「アニマルラバーバンド」
出典:Amazon.co.jp
※使用後も元に戻る動物の形をした輪ゴム
意匠権の保護期間は、
2020年3月31日以前に出願されたものは20年、
それ以降に出願されたものは25年となっています。
中国輸入OEM販売をする際は、ノーブランド品に
タグ付けやロゴを入れるなどの簡易加工をして売り出す、
つまりデザイン等はそのままで売る場合があります。
この場合も、元のノーブランド品が、
大手メーカー商品のデザイン等をパクっていないか?
はチェックしておかなければいけません。
④商標権
商標権は、商品・サービスに使用する
マークを保護する権利です。
基本的な保護範囲は
- 文字
- 図形
- 立体形状
等ですが、平成26年に商標の定義が見直され、
- 動き
- ホログラム
- 音
- 位置
- 色彩
も追加で対象となっています。
商標権の保護期間は10年です。
ただし、特許などと違い更新制となっているので、
更新さえすれば永続的に権利が発生します。
中国輸入OEM販売では、
商品名、ブランド名、ロゴを作成する際に
商標権の侵害をしていないか確認する必要があります。
また、仕入れ商品にすでにロゴ等が入っている場合は、
そのロゴが商標権違反をしていないかも
確認しなければいけません。
中国輸入においては、ブランドの偽物品を
仕入れようとして関税法違反で
告発されるケースが後を絶ちません。
出典:財務省
もし他社の商標を無断で使用した商品を
販売した場合は商標法違反となり、
販売の差し止めに加えて損害賠償請求の訴訟、
最悪、逮捕されるリスクもあります。
商標権は、それだけ強力な権利ということです。
逆に言えば、商標登録済みのロゴ・名前をつけた商品は
他社が相乗り販売できなくなるので、
OEM販売が軌道に乗り出したら
商標登録を検討してみてください。
商標は、自分ですべて申請するなら約3万円強、
特許事務所や弁理士にすべて依頼する場合は
15万円前後で申請ができます。
申請手続きの際に面倒なのが、
「申請しようとしているブランド名やロゴが
すでに商標登録されているか?」
を調べることです。
見落とし等で、既に商標登録されているものと
同じもの・似たものを申請すると
却下されてしまいます。
特許事務所や弁理士の中には「先行商標調査サービス」を
だいたい3万円前後で提供していることもあるので、
このサービスだけを使えば費用はある程度抑えられます。
ちなみに、商標登録の申請が完了するには
最短でも2〜3ヶ月かかるので、
ある程度余裕を持って申請することをおすすめします。
⑤著作権
著作権は、文芸、学術、美術、音楽、
プログラム等の精神的作品を保護する権利です。
以下のようなものが該当します。
- 小説、脚本、論文、漫画
- 写真
- 絵画、版画、彫刻
- 映画、テレビ番組、ゲームソフト
- 音楽の曲・歌詞
- バレエ、ダンスなどの振り付け
- 設計図、地球儀
- コンピュータープログラム
ちなみに、著作権は作品が完了した時点で
権利が発生するため、登録・申請手続きの
必要はありません。
保護期間は著者の死後70年まで
(法人は公表後70年、映画は公表後70年)と、
他の権利と比べてもかなり長いです。
中国は、偽ドラえもんや偽ミッキーマウスなど
他国のキャラクターをパクった製品を作ることで有名ですが、
いまだにそうした著作権を無視した商品は作られています。
もちろん、中にはブランド元の企業と提携して
本物の製品を作っているケースもあります。
しかし、アリババ等の中国ECサイトで売られているものは
本物と偽物の区別が付かないため、
基本的には漫画やアニメのキャラクターグッズは
仕入れ対象にすべきではありません。
他にも、他国のマイナーキャラクターを
パクっていて気づかないこともあるので、
もし仕入れるなら事前に画像検索等をして
著作権違反していないかを確認してください。
中国輸入OEM販売で、知的財産権を侵害していないかチェックする方法
OEM元の商品をリサーチする際や
ブランド名・商品名を決める際は
知的財産権を侵害していないか?
以下の方法で確認しましょう。
特許情報プラットフォーム「J-Plat Pat」を活用する
知財総合支援窓口に相談する
弁理士に相談する
特許情報プラットフォーム「J-Plat Pat」を活用する
「J-Plat Pat」を使えば、登録済みの
特許・実用案件、意匠、商標を確認できます。
使い方は簡単です。
サイトにアクセスして、
検索窓にキーワードを入れて検索。
今回は「snowpeak」と検索したら、
37件の商標が登録されていることがわかりました。
同じ商標でも区分(業種)が違えば
使えるケースもありますが、
できればすでに登録されているものは
使わないのが無難です。
また、他の商品とは形状・模様・色彩が
異なる商品については意匠権の有無も
確認しておきましょう。
出典:Apple
たとえば、Appleのワイヤレスイヤホン「AirPods」。
発売当初はその特徴的な形から
「耳からうどんが出てるみたい」と
揶揄されていました。
J-Plat Patで検索してみると、
意匠権の登録がされていることがわかります。
このように、大手メーカーが販売している、
デザイン(形状・模様・色彩)に特徴がある商品は
意匠権も絡む場合があるので注意しましょう。
知財総合支援窓口に相談する
知財総合支援窓口は、特許や商標などの
知的財産に関する相談を無料でできる窓口です。
先ほど紹介した「J-Plat Pat」の
詳しい検索方法などについても
教えてもらえます。
知財総合支援の窓口は全国47都道府県に
設置されているため、地方在住の方でも
アクセスしやすいです。
弁理士に相談する
弁理士が加入する”日本弁理士会”も、
無料の知的財産相談室を設けています。
特許、実用新案、意匠、商標の出願手続のほか、
調査、鑑定、異議申立、訴訟などの相談を
無料で行えます。
日本弁理士会の窓口は、以下の9ヶ所です。
- 北海道会:北海道札幌市北区北七条西4-1-2 KDX札幌ビル3階
- 東北会:宮城県仙台市青葉区本町3-4-18 太陽生命仙台本町ビル5階
- 北陸会:石川県金沢市鞍月2-2 石川県繊維会館2階
- 関東会:東京都千代田区霞が関3-4-2 弁理士会館 1階
- 東海会:愛知県名古屋市中区栄2-10-19 名古屋商工会議所ビル8階
- 関西会:大阪市北区梅田3丁目3番20号 明治安田生命大阪梅田ビル25階
- 中国会:広島市中区八丁堀15-6 広島ちゅうぎんビル4階
- 四国会:香川県高松市サンポート2-1 高松シンボルタワー・サンポートビジネススクエア2階
- 九州会:福岡市博多区博多駅前2丁目1番1号 福岡朝日ビル6階
自宅近くに窓口がある人は、
日本弁理士会に相談してみてもいいでしょう。
まとめ
法律関係はわかりづらい部分も多いので、
ついつい敬遠しがちです。
しかし、今回紹介した「知的財産権」については、
中国輸入OEM販売と深く関係しているので、
ぜひ頭に入れておいてください。
知識が頭に入っているだけでも、
他社の知的財産権を侵害してしまう
リスクを減らせます。
また、万が一他社に侵害された場合も、
すぐに対応ができます。
商標登録などの手続きについては、
専門家に聞いた方が早い場合もあります。
今回紹介した「知財総合支援窓口」や「日本弁理士会」は
無料で相談できるので、ぜひ活用してみてください。